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第二章:五つの出会い

Penulis: 佐薙真琴
last update Terakhir Diperbarui: 2025-12-16 06:27:06

 レイと五人の恋人たちが出会ったのは、それぞれ異なる場所で、異なる状況だった。

 最初に出会ったのは、隼人だった。

 一年前、レイがまだ前の会社でデザイナーとして働いていた頃のことだ。取引先の広告代理店から派遣されてきた営業マンが、隼人だった。

 彼は背が高く、スーツを着こなしている典型的なビジネスマンだった。しかし、その目には、深い疲労が宿っていた。

 プロジェクトの打ち合わせの後、レイは偶然、廊下で隼人を見かけた。彼は壁に寄りかかり、目を閉じて深呼吸をしていた。

「大丈夫ですか?」

 レイが声をかけると、隼人は驚いたように目を開けた。

「あ、すみません。ちょっと疲れてて」

「無理してませんか?」

「無理、か。もう何が無理で、何が無理じゃないのかもわからなくなってきました」

 その言葉に、レイは何かを感じた。

 打ち合わせの後、二人はカフェで話し込んだ。

 隼人は語った。毎日終電まで働き、週末も接待やゴルフで潰れる。恋人を作る時間もない。結婚なんて夢のまた夢。このまま歳を取って、何も残らずに死んでいくのではないかという恐怖。

「でも、やめられないんです。この会社を辞めたら、自分には何も残らない気がして」

「あなたは、会社じゃない。あなた自身よ」

 レイの言葉に、隼人は目を見開いた。

「そんなこと、誰にも言われたことがなかった」

 それから、二人は頻繁に会うようになった。

 隼人は、レイと一緒にいる時間が、唯一自分らしくいられる時間だと言った。

 そして、ある日、告白された。

「君のことが好きだ」

 レイは、正直に答えた。

「私も、あなたのことが好き。でも、知っておいてほしいことがある」

 そして、レイは自分の生き方を説明した。一人の人だけを愛するという形は、自分には合わない。もし、それが受け入れられないなら、友達でいましょうと。

 隼人は長い沈黙の後、言った。

「それでもいい。君と一緒にいられるなら」

 二人目は、蒼太だった。

 レイが通っている美容室で、新人として入ってきたのが彼だった。二十五歳。美容師として独立することを夢見ている青年。

 最初は、ただの美容師と客の関係だった。しかし、蒼太の繊細な指使いと、髪に対する情熱に、レイは惹かれていった。

「レイさんの髪、本当に綺麗ですね」

 シャンプーをしながら、蒼太が言った。

「ありがとう」

「でも、ちょっと傷んでる。もっとケアしたほうがいいですよ」

「そうなの?」

「はい。レイさんみたいに綺麗な人には、もっと綺麗になってほしいんです」

 その言葉に、レイは少し驚いた。

 それから、蒼太はレイのために特別なトリートメントを調合してくれるようになった。

 ある日、閉店後の美容室で、二人きりになった。

「レイさん、俺、実は」

 蒼太が言いかけて、言葉を飲み込んだ。

「どうしたの?」

「いや、何でもないです」

 でも、レイにはわかっていた。

「私に、言いたいことがあるんでしょう?」

 蒼太は、頬を赤らめた。

「レイさんのこと、好きです」

 レイは微笑んだ。

「私も、あなたのことが好きよ」

「本当ですか?」

「本当」

 そして、レイは自分の生き方を説明した。

 蒼太は、少し考えた後、言った。

「俺、レイさんを独占したいとは思わない。レイさんが幸せなら、それでいい」

 三人目は、理央だった。

 レイが地域のボランティア活動で出会ったのが、高校教師の理央だった。生徒たちのために、週末も返上して教育活動に取り組む真面目な男性。

 彼は、レイの自由な雰囲気に最初は戸惑っていた。

「あなたみたいな人、初めて会いました」

「どういう意味?」

「なんというか、縛られてない感じがする」

「縛られるのは嫌いなの」

「羨ましいです」

「あなたは縛られてるの?」

「教師という職業は、色々と縛られますから」

 理央は、教師としての責任と、個人としての自由の間で揺れていた。

 生徒たちの模範でなければならない。社会の期待に応えなければならない。でも、自分の人生はどこにあるのか。

 レイと話すうちに、理央は自分の本音を語れるようになった。

「本当は、もっと自由に生きたいんです」

「じゃあ、そうすればいい」

「でも、それは無責任じゃないですか?」

「責任を果たすことと、自分を殺すことは違うわ」

 理央は、レイに惹かれていった。

 そして、ある日、告白した。

「レイさん、僕はあなたが好きです」

 レイは、いつものように正直に答えた。

 理央は、最初は戸惑った。しかし、考えた末に言った。

「それでも、あなたと一緒にいたいです」

 四人目は、奏多だった。

 音楽イベントで偶然出会った。フリーランスの音楽プロデューサーとして、常に次の仕事を探している彼は、不安定な生活に疲れていた。

「安定なんてない。明日の仕事があるかどうかもわからない」

「でも、音楽は好きなんでしょう?」

「好きだけど、好きだけじゃ生きていけない」

「じゃあ、何のために音楽やってるの?」

「それが、わからなくなってきたんだ」

 奏多は、自分の情熱と現実の間で苦しんでいた。

 レイは、彼の作った曲を聴いた。

 それは、悲しくて、美しくて、切実な音楽だった。

「素晴らしいわ」

「本当?」

「本当。あなたの音楽は、人の心を動かす」

 その言葉に、奏多は涙を流した。

「そんなこと言ってくれる人、初めてだ」

 それから、二人は頻繁に会うようになった。

 そして、奏多も告白した。

「レイ、俺、君が好きだ」

 レイは、同じように正直に答えた。

 奏多は、笑った。

「それでいいよ。君は、俺に音楽の意味を思い出させてくれた。それだけで十分だ」

 五人目は、悠馬だった。

 大学生の彼は、カフェでアルバイトをしていた。レイが通うカフェに、新しいバイトとして入ってきたのが悠馬だった。

 最初は、何度か言葉を交わす程度だった。しかし、悠馬の笑顔が、どこか無理をしているように見えた。

「大丈夫?」

 ある日、レイが尋ねた。

「え?」

「無理してない?」

「......わかります?」

「わかるわ」

 悠馬は、家族からのプレッシャーについて語った。

 名門大学に入り、大手企業に就職し、良い家庭を築く。それが、両親の期待だった。

「でも、俺、本当にそれがしたいのかわからないんです」

「じゃあ、何がしたいの?」

「それも、わからない。ただ、このままじゃダメな気がする」

 レイは、悠馬に言った。

「答えは、誰かが与えてくれるものじゃない。自分で見つけるものよ」

「レイさんみたいに?」

「私も、まだ見つけてる途中よ」

 それから、悠馬はレイに相談するようになった。

 そして、ある日、告白した。

「レイさん、俺、あなたのことが好きです」

 レイは、同じように正直に答えた。

 悠馬は、少し考えて、言った。

「それでいいです。レイさんと一緒にいられるだけで、俺は幸せです」

 五人。

 それぞれが、異なる理由でレイを愛した。

 そして、レイもそれぞれを、異なる理由で愛した。

 隼人の強さと脆さ。蒼太の繊細さと情熱。理央の真面目さと葛藤。奏多の才能と不安。悠馬の純粋さと迷い。

 レイは、五人の全てを愛していた。

 それは、決して浅い愛ではなかった。

 一人一人と向き合う時間は、完全にその人だけのものだった。

 レイは、誰にも嘘をつかなかった。

 五人も、最初は戸惑ったが、やがて受け入れた。

 なぜなら、レイと一緒にいる時間が、彼らにとって何よりも大切だったから。

 そして、それぞれが少しずつ、自分らしく生きることを学んでいった。

 しかし、この平穏な日々は、いつまでも続くものではなかった。

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